その6 第11章 貿易取引に関係する裁判 ジョブ 貿易事務所 に相談メールを送ってきたのは、貿易取引に関係した訴訟を抱えていた弁護士でした。 丁度、2004年(平成16年)の暮れのことで、ジョブ 貿易事務所 を開業して20年になろうとしていた頃でした。この一通のメールが ジョブ 貿易事務所 の業務を大きく広げる事になりました。 この相談メールを私に送ってきて下さった弁護士をここでは、T 弁護士 と称する事と致します。 T 弁護士のクライアントがある裁判で訴えられ、第1審で敗訴してしまい控訴審の用意をしているが、訴訟内容が貿易実務に深く係わっていて、T 弁護士の法律事務所では貿易実務に詳しい者の支援を求めているとの事でした。 私自身は法学部を出ているとはいえ、実際の裁判に係わる案件であったので、先ずは私の父の時代から懇意にして頂いていて、ジョブ 貿易事務所 の 設立にも色々と助言を下さった弁護士の先生に相談をしてみました。 相談をするや否や、先生からは「是非、前向きに取り組むべきだ」と、背中を強く押されました。 他にも色々とこの事案に助言を下さり、私はこの案件に取り組んでみる覚悟を決めました。 ジョブ 貿易事務所 にとっては、また一つ新し地平を開く事になると考え、尽力してみる事に致しました。 法学部を卒業してから、久しぶりに法律、それも訴訟関係の資料に向き合う事となりました。 先ずは、第1審の判決文を取り寄せるところから着手しました。 T 弁護士は、大変協力的で、ほどなく私は訴訟内容の全体像を把握する事が出来ました。 第1審の判決文を読み、訴訟の全体像を理解した私が最初に感じたことは、「このような判決で結審させてはいけない」という強い思いでした。 それと同時に、法学部時代に学んだ「法社会学」という、当時法学部ではマイナーだった講義の内容や、「法の正義」などという懐かしい言葉を思い出していました。 幸いにして、この裁判で問題となっている複数の国際取引は、全て信用状決済でした。 従って、証拠書類は十分に入手する事ができましたし、第1審で原告側が証拠として提示していた売買契約書も豊富にあり、更には第1審では複数の証人が発言しており、それらの発言内容も私が事件の実態を理解する上では大いに役立ちました。 そして、私の結論は第1審の判決とは正反対でした。 つまり、T 弁護士は勝訴しなければならない裁判でした。 従って、私の成すべきことは明白でした。 原告側が主張していた内容、そして原告の主張が正しい事を裏付けているとして法廷に提出された証拠の数々、それらの全てが誤って解釈されたものであると云う事を、提出されていた証拠、証人の証言記録、契約書などの多数の書類をそのまま使用して、理論的に説明し、原告側の主張内容を一つ一つ、具体的な証拠を示して崩してゆく事でした。 この複雑な訴訟内容の実態と全体像が見えたとき、私は T 弁護士は負ける筈がないと確信していました。 この裁判では、日本への複数の輸入取引が対象になっていて、各取引について売主と買主の他に、仲介者が複数介在しているという複雑な構造を持っており、裁判で争われた取引そのものが複雑化していました。 更には取引に関与した売買当事者や仲介者が(少なくとも被告、つまり T 弁護士のクライアントは)、それらの複雑化してしまった取引実態を誤って理解してしまった為に、その誤って理解した取引内容に適合するように誤った契約書を作成してしまい、事態をさらに複雑化していたという事件でした。 これほど複雑化した案件は、私もあまり取り扱ったことはないと思うのですが、信用状決済であったために客観的事実を証明する証拠書類が豊富に存在し、第1審の証人の証言記録が取引実態を正しく理解する上で大いに役立ちました。 T 弁護士からは、その後、控訴審にて無事に勝訴したとの連絡を頂き、私としても喜んだ訳ですが、私の本心は勝訴の報を受けて喜んだという事よりも、1審で敗訴した事の方を重く考えていました。 この裁判に取り組んだ事が、ジョブ 貿易事務所 の今後の在り方を考え直す契機になりました。 前章にて、「貿易コンサルタントの社会的意義」というタイトルで私の考えを述べましたが、この T 弁護士の裁判を通じ、貿易取引に関係した裁判というものも、私の視野に入れるべきだと考えるようになりました。 また、裁判だけに限らず、いわゆるADR (Alternative Dispute Resolution = 裁判外紛争解決手続き)である、仲裁、調停、斡旋 にも関心を持つようになりました。 特に、第1審で展開された原告側の理論構成と、それをほぼそのままの状態で受け入れていた判決文を読んで、私の心は、とても暗い思いに覆われてしまいました。 弁護士も裁判官も、法律の専門家である事には間違いがないと思いますが、貿易実務(貿易商務論)については全く理解が無いのだと知りました。 特に、第1審で成された原告側の説明は、貿易実務を正しく理解している者にとっては、あまりにも現実離れをしている内容でした。 原告側は攻める立場にあるので、被告を責めるために意図的にそのような「こじつけ」の理論展開をしたのかもしれませんが、その詭弁とも云うべき説明を、ほぼそのまま受け入れていた裁判官の判決文を読んで、裁判の限界を見た思いでした。 果たして、貿易取引に関係した裁判で、このような理不尽な判決はいかほど成されているものか... ジョブ 貿易事務所 は、このような状況に対し、何が出来るのだろうか、或いは何をすべきだろうか? 私の心は、新しい方向を求めて動き始めました。 (続く) |
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