貿易取引は、企業の取り引き市場を大きく広げてくれます。 しかし、そこには色々なリスクが潜んでいます。 英語の risk (= リスク) とは「事前に把握した上で、敢えて冒していく危険」 の事です。 一方、被害が予測できない、決して近寄ってはいけない危険は danger (= デインジャー) と呼びます。 リスクとは事前に把握しておくべき危険の事なのです。 従って管理しておく事が大切なのです。 ここでは、貿易取引に固有のリスクについて概略を紹介致します。 |
貿易取引には、国内取引には見られない独特のリスクがあります。
商行為の取引ですから色々なリスクもあって当然ですが、事前にそれらのリスクを想定し、研究し、対策を講じておく事は可能です。
リスクの内容が事前に分かっていれば、それをコントロールする事も出来ると考えています。
貿易取引のリスク・マネジメント(リスク管理)を確実に行う為に、貿易取引に係わってくる色々なリスクについて列挙したいと思います。
1. カントリー・リスク 例えば、ある国 (「A国」 と呼ぶ事にします)の会社と順調に日本への輸入の商談を進めて、いざ商品が出荷される段階になってA国に暴動がおこり、道路や港湾設備が閉鎖されれば、商品の出荷は出来なくなってしまいます。
或いは、A国の法令が突然変更され、日本への輸出が出来なくなってしまうという事もあり得ます。
2. 通関に関するリスク 例えば、A国の会社と順調に輸出の商談を進め、いざ輸出の段階になって輸出申告をしたら、輸出許可が得られないという事も起こりえます。
同様に、A国からある商品を輸入する商談を進め、商品が既に東京港に到着したので輸入申告をしたところ、輸入許可が得られないという事も起こりえます。 3. 為替リスク 日本の通貨 「円」 も近年では海外との代金決済に用いられる機会が増えて来ていますが、やはり U.S.ドル や ユーロ などを決済通貨として使用する場面は多くなります。 そこで、国内取引では通常発生しない 「為替リスク」 というものが出てきます。 為替リスクの管理で難しい点は、「為替差益」と呼ばれるように、時には予想外の利益が生まれてしまう点にあるように思います。 激しく移り変わる世界情勢の中で、外国為替の変動相場を正確に予測する事は不可能です。 しかし、為替リスクというものを無視して貿易取引に取り組むべきではありません。
4. 長距離輸送に関するリスク
5. 品質や数量に関するリスク
6. 納期に関するリスク
品質違いや納期遅延のリスクは、「商機の逸失」 につながります。 十分な対策が必要です。
7. 言語に関するリスク
「貿易英語」などという言葉がありますが、貿易取引に使用される英語には 「特殊な意味をもつ英語 = Technical Terms」
というものがあります。 大きな辞書を引いても、最後の方に出てくるような意味で使用される事があるので、言語に関するリスクを軽視する事は
商取引を進める上で大きな障害となり得ます。
8. 文化の違いによるリスク
9. 国際詐欺集団 の リスク 最後に、国際詐欺集団 や 詐欺に関するリスクにも注意が必要です。 前項の「文化の違い」にも関係していますが、日本では信じられないような詐欺の手口や、大がかりな国際詐欺集団というものが存在しています。 ジェトロ(日本貿易振興機構)などでも詐欺の手口を紹介したりして注意を喚起する情報を提供していますが、国際的な詐欺事件は年々手口が巧妙になって来ています。 偽造した小切手なども、平気で送り付けて来ます。 初めから、日本の企業を狙い撃ちにして来る詐欺集団もありますから、この手のリスクには余程の注意が必要という事になります。
10. 「番外編」 自己流 貿易 の リスク 番外編として、ジョブ 貿易事務所 の33年わたる貿易コンサルタントとしての経験から指摘しておきたいものとして「自己流貿易のリスク」があります。 近年は、外為法の規制が緩やかになり、国際物流 や 国際情報伝達 の 技術革新などにより従来よりも貿易取引が簡便になって来ています。 その弊害として、自己流の貿易手続きでも、一見して順調に取引が出来ているように感ぜられる事があります。 実は、ここに大きなリスクがあるのですが、当事者にはその点が分かりません。 貿易取引は、大航海時代をはじめ、長い歴史の下に発展、工夫され、システム化されて来ていると言えます。 私達の21世紀の貿易取引も、その大きなシステムの中で機能しているという事を忘れてはいけません。 貿易に関する各種手続きなどは、「貿易商務論」という学問にさえなっています。 貿易取引を進める上での一つ一つの手続きや、一枚の書類にも、貿易と云うシステムの中ではちゃんとした意味があるのです。 しかしながら、このシステムの全体像を理解せずに自己流貿易で突き進むと、一つの手続き、一枚の書類の持つ意味がどこかへ忘れ去られ、長い歴史の中で、先人達が幾度となく失敗を積み重ね、高い代償を払いながら作り上げられてきた「貿易システム」の安全性が損なわれてしまうのです。 実践無き理論は空虚であるが、理論無き実践は危険である。
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