職業 = 貿易コンサルタント、以上。  

 その4

第7章  ジェトロ認定貿易アドバイザー試験

前章にて触れましたが、平成(1990年代)に入ると徐々に貿易コンサルタントと自称する事業者が目に触れて来るようになって参りました。特に、Windows® 3.1 が出たころからインターネットの利用者が急激に増え始め、ウェブサイトや電子メールが普及し始めると誰もが低コストで情報を発信できるようになってきました。中には、ジョブ 貿易事務所のウェブサイトを丸ごとコピーしているふとどきな「ニセ者」も出現してくる始末で、本当に貿易コンサルティングを行える技量や知識を持って真摯に取り組んでいる者と、いい加減な内容の「自称・貿易コンサルタント」が混在するという状況が生まれてしまいました。

 

当時の日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」に代表される、バブル景気の恩恵を受けつつも、対米貿易黒字が膨らんでいる時代でした。 そのような社会背景のもとに、平成6年(1994年)1030日にジェトロ(日本貿易振興会;当時の名称)が第一回「ジェトロ認定輸入ビジネス・アドバイザー試験」の1次試験を実施し、面接試験の2次試験を経て平成7年(1995年)214日にジェトロ認定輸入ビジネス・アドバイザーの第1期生 118名がジェトロから認定を受けました。 当時は「輸入ビジネス」に限定されていたものの、日本において歴史上初めて公的機関 から「貿易アドバイザーとしての技量や知識を認められた者」が排出されました当時のジェトロは「日本貿易振興会法」という法律に基づいて昭和33年に設立された特殊法人でした)。

 

第二次世界大戦後、USD1=JPY360.- という今では考えられないほどの円安の固定相場の下で、日本の産業界は原材料を輸入して完成品を輸出するという加工貿易に注力し、特に米国向けの輸出事業が好調で、貿易と云えば「輸出」を指す時代が日本では長く続いていました。 従って「輸入ビジネスを理解している者」は、当然「輸出ビジネスも理解している」と考えられる時代でありました。  それでは何故、ジェトロは1995年の時点で「貿易アドバイザー」ではなく、「輸入ビジネス・アドバイザー」と称したのでしょうか? あくまでも個人的な推測ですが理由は「膨大な対米貿易黒字」にあったように思います。ジェトロは、通商産業省(現:経済産業省)の外郭団体とも云うべき組織でしたから、米国からの働きかけがあったとしても不思議はありません。 これ以上の対米貿易黒字は憚られたのでしょう。  輸入を促進して貿易黒字を減らすことが期待されていたのだと思います。ちょうどその頃、「輸入住宅事業」という言葉が新聞紙面を飾りました。 また「輸入住宅」の案件に関するセミナーが各方面で実施されました。動産で高額商品と云えば自動車でしょうが、自動車よりも高額な動産商品(?)と云えば、住宅でしょう。

 

ジェトロ認定輸入ビジネス・アドバイザーが排出された歴史的背景はさておき、ジェトロの認定制度によって、「ニセ者」の貿易アドバイザーが消えていく事になりました。ジョブ 貿易事務所では、自らの事業内容を、貿易コンサルタント、貿易顧問、という言葉で表現していましたので、それらに加えて貿易アドバイザーという呼称も追加する事になりました。ジェトロは、平成12年(2000年)41日に、正式に「輸入ビジネス・アドバイザー」という名称を、「貿易アドバイザー」に変更しています。これにより、いわゆる「自称・貿易コンサルタント」は排除される事になりました。

 

私自身は、1985年から貿易コンサルタントを職業としてジョブ 貿易事務所を開業しておりましたから、ジェトロの試験に不合格となれば廃業も止むないところでしたが、無事に合格して面目を保った事になります。ジェトロは、平成20年(2008年)3月末日をもって15年間続けた貿易アドバイザー認定事業を廃止しましたので、その後はAIBA(アイバ = 貿易アドバイザー協会)が認定事業を引き継ぎました。  現在も、毎年、AIBAAIBA認定貿易アドバイザー試験を実施しています。 この試験は、現在、我が国で第三者に対して貿易取引をアドバイスし、指導する技能や知識を認定する唯一の試験です。重要な点は、「第三者に対してアドバイスや指導する事が出来る」という点です。 「自分自身が知っていて、自分で出来る」という技能や知識を認定する試験ではありません。簡単に言えば、「自身の貿易の技量を測る試験」ではなく、「貿易を教える先生としての技量を測る試験」です。 従って、現在の日本で、貿易の技量や知識を問う試験では、最も難関な試験であると言えるでしょう。

 





 

第8章  貿易アドバイザー協会(AIBA = アイバ)

平成7年(1995年)214日にジェトロ認定輸入ビジネス・アドバイザーの第1期生 118名が世に出てから、間もなくして有志達が集まり、認定を受けたアドバイザー達で団体を作ろうという動きが起こりました。最初に集まった有志のグループは自分達の会に「輸入ビジネス・アドバイザー連絡会(仮称)設立準備実行委員会」という名称を付け、この名称の下にて第1回の会合が平成7年(1995年)912日に東京で開かれました。  私も、その会合に出席し、その後数回の会合で準備を進め、平成8年(1996年)126日に東京でAIBA設立総会が開かれ、「輸入ビジネス・アドバイザー連絡会」英文名称 「Association of Import Business Advisors」略称 「AIBA(アイバ)」 が正式に設立されました。

 

AIBA設立総会では、AIBA1期の役員が選出され、私は第1期の理事に就任し、第1の暫定期間を含めてAIBAの草創期のおよそ3年間をAIBAの理事としてAIBAの発展と活動に尽力致しました。 私が理事としてAIBAに最も貢献できたことは、AIBA-NET の開設であろうと思います。 当時、Windows® 95 が急速にインターネットを普及させ、ネット社会が始まろうとしていました。電子メールを利用したメーリング・リストは、閉鎖系のSNSとして必ずAIBA の役に立つに違いないと考えていた私は、当時第2期生としてAIBA に加入してきたネットに詳しかった F さん(残念ながらAIBAを退会されていますので、お名前は伏せさせて頂きます)と二人で立ち上げました。技術的な部分はF さんが担い、私は AIBA-NET 担当理事として、1996年当時では最新のSNS AIBAで普及させる事に尽力しました。未だパソコンには不慣れなAIBA 会員も多かった状況で、AIBAの勉強会としてFさんと一緒に、最初はパソコン教室から始め、インターネットの使い方、電子メールの書き方などのセミナーを何度も開きました。 AIBA-NET とは、AIBAの会員だけが加入できるAIBA内の閉鎖系のメーリング・リストで、AIBA設立から20年以上を経た現在も、AIBAの中では最重要な情報交換のツールとして活発に使用されています。

 

既に、20年以上の歴史を刻んだAIBAですが、その正式な日本語名称は、以下のように変遷し、現在に至っています:−

2000年(平成12年): 貿易アドバイザー連絡会

2001年(平成13年): 貿易アドバイザー協議会

2005年(平成17年): 有限責任中間法人 貿易アドバイザー協会

2009年(平成21年): 一般社団法人 貿易アドバイザー協会

 

AIBAが発足しておよそ3年が経過し、順調に会員数も増えてきたので、私自身は約3年で理事を退任させて頂き、本業の「ジョブ 貿易事務所」に注力するようになりました。 AIBAにては、現在も幾つかの事業に参加しており、AIBA会員としての活動を20年以上続けています。 振り返ってみれば、私のような生粋の職業貿易コンサルタントは、AIBAの中では未だ特異な存在であると云えます。 AIBAに入会された方々は、どなたも難関の試験をクリアーされた貿易取引の専門家である事は間違いのないところですが、「貿易の専門家」と「貿易コンサルタント」とは、似ていて非なる部分があります。 AIBA会員の経歴を拝見すると、多くの方が「その道一筋数十年」という専門家であるように思います。私の例を挙げるならば、銅管の輸出案件ならば、今でも燐(リン)脱酸銅管の仕様明細までスラスラと言えるものの、貿易コンサルタントになってから33年を経ても尚、いまだに銅管の輸出案件というものには巡り合っていないのです。 代わりに、生鮮食料品(食品安全法)、化粧品(薬機法;旧薬事法)と、貿易関係法令が複雑に絡み合い、自分にとっては全く未知の分野の案件が次々と舞い込んできました。米国の同時多発テロ以降は、安全保障貿易管理が大幅に厳しくなり、輸出についても従来以上の慎重さが必要になりました。 今まで自分が慣れ親しんできた事業分野を離れ、自分にとって「全く未知の分野」にチャレンジして進むか否かが、分かれ道のように思います。

 

今まで一度も扱ったことがない商品分野の貿易コンサルティングの要請に対し、一体どのようにしたら取り組んで行けるだろうか? 私の出した答えは、「貿易取引を実務レベルで徹底的に体系化し理論化して認識し、理解する」と云う事でした。

 

   

その5へ続く

 

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